男性の離婚 その4 財産分与(part2)

こんばんは。ho-rituiroiroです。

 

昨日は、財産分与の導入的なことを書きました。

今日からは、財産分与の対象財産や、その評価、それから特有財産について書きたいと思います。

なお、今日から書くことは、個人的な見解であることもあって、必ずしも一般的でなかったり、個別具体の事例では違った考え方をしたりすることがあるので、その点はご容赦ください。

 

さて、早速ですが、財産分与の本質は、「清算」です。

清算」というと、日常的な意味は多義的ですが、法的には、「ある一時点で切り取った財産を、バラバラにして個別に換価する」という意味を持ちます。

 

この点、破産は、財産分与に近いイメージです。

破産手続では、債務者が破産手続開始時点で保有する一切の財産を、一旦バラバラに解体して、金銭に換価して、債権者に分配します。

財産分与においても、夫婦が別居時点で保有する一切の財産を、一旦バラバラに解体して、金銭的に評価し、夫婦に分配するのです。

 

このことから、財産分与では、①別居時点で有する、②金銭に評価できる一切の財産が分与の対象となる、ということができます。

 

分与対象財産として見落とされやすい財産としては、保険、退職金があります。

 

まず保険のうち、解約返戻金のある保険は、別居時点で解約したものと仮定して、分与対象財産に組み込まれます。

たとえば、別居時点で解約返戻金が100万円あれば、「実際に解約するかどうかにかかわらず」、その保険を100万円と評価して、プラスの財産に組み込みます。

 

次に退職金は、「給与の後払いの性格がある」などという理由で、理屈上、財産分与の対象財産となります。

つまり、日々支払われる給与が財産分与の対象となる以上、これを後払いしているにすぎない退職金も当然、財産分与の対象財産となるはずだ、という理屈です。

 

ただ、理屈はそうでも、かなり先の退職金については、実際にもらえるかどうかわかりません。

そのため、「退職金をもらえる蓋然性がある(確率がとても高い)」場合に、退職金が財産分与の対象財産となる、と一般に理解されています。

 

この点、実際に退職金が財産分与の対象になるかどうかについて、私の感覚は、①就業規則等に退職金に関する定めがあり、②勤務先会社で退職金が支払われている実績があって、③5年以内に退職する見込みで、④業績不振など退職金の支給を阻害する要因がない場合には、100%に近い確率で退職金が財産分与の対象となり、それ以外の場合には、ケースバイケースという感じです。

たとえば、退職が10年先となれば(上記③を欠くケース)、退職金をもらえる可能性は低くなるでしょうし、逆に、就業規則等に退職金に関する定めがなくても、実際に退職金が支払われている実績があれば(上記①を欠くけど、②は満たすケース)、それは退職金をもらえる確率には影響しないだろうとか、そういった感覚です。

 

退職金が財産分与対象財産になるとした場合、退職金をどう見積もるかという点が次に問題となります。

 

ここで、「将来支給される退職金を基準」とする場合、理論的には、

①婚姻期間に応じた割合で計算する

②期待値をかける

③現在価値に割り戻す

というのが正しいと考えられます。

 

このうち、①は一般的な考え方です。

たとえば、婚姻するまでの勤務期間が10年、婚姻期間が20年、別居後退職金が支給されるまでが10年とすると、婚姻期間の勤務期間全体に対する割合は20/40ですから、将来支給される退職金の2分の1を分与対象財産と一応、算定します。

 

その上で②は、上の例でいうと、退職金が支給されるまで10年と長いですから、100%に近い確率でもらえるとは思えません。

そこで、たとえば80%くらいの確率でもらえると仮定して、これを掛け合わせることが、理屈にかなっているということです。

 

さらに③は、たとえば今1000万円もらうのと、将来1000万円もらうのとでは、その価値が違います。

なぜなら、今1000万円もらえれば、貯金するだけでも僅かながら利息などがついて、将来1000万円よりも高くなるからです。

つまり、将来の退職金については、割り引いて考えることが必要です。

ただ、現在価値の計算は、利息を幾らにするかという難しい問題があります。

 

以上のことから、退職金については、「将来支給される退職金を基準」とすると、厳密に考えた場合、とても難しい問題に立ち入ることになります。

そこで、私としては、穏当な方法として、「別居時点で退職した場合に支給される退職金を基準」とし、退職金をもらえる可能性の程度を考慮して微調整することが、現実的だろうと考えています。

 

以上、財産分与の対象財産の基本的な考え方と、財産分与の対象となる財産として見落とされがちな財産について書きました。

 

少し長くなりましたので、残りはpart3に残したいと思います。

 

part3に続く