男性の離婚 その3 婚姻費用(part2)

こんにちは。ho-rituiroiroです。

 

前回のpart1では、ざっくり、「婚姻費用を算定表より減らすことは無理なので、諦めましょう」といったことを書きました。

 

もっとも、算定表よりも低い金額が認められるケースがないわけではありません。

結論からいえば、①相手方の生活費の一部を負担し続けている場合、②こちら側でこどもを養育している場合の2つのケースでは、理論上、婚姻費用を算定表よりも減額できます。

 

まず、婚姻費用は、次の計算式によって求められています。

1)当事者の「基礎収入」を合計…夫(X)+妻(Y)

2)妻側の生活費割合を計算…妻側の「生活指数」/全体の「生活指数」

3)妻側に割り振られるべき生活費の額を計算…上記1)×上記2

4)不足する生活費(婚姻費用)を計算…上記3)-妻の基礎収入(Y)

 

ここで、「基礎収入」とは、ざっくり、税引前の収入から税金や経費(職業費や住居費)を引いた残りです。言い換えると、「生活費(食費や学費)に使えるお金」です。

また、「生活指数」とは、大人1人の生活費を100とした場合に、そこから1人増えることによって増加する生活費を指数化したものです。

算定表では、大人は100、子どもは年齢に応じて、14歳以下は55、15歳以上は90とされています。

 

このように、算定表は、標準的な住居費や生活費を、基礎収入の認定や生活指数の認定にあたって考慮しています。

 

したがって、たとえば、別居にあたって、奥さん側がそのまま従前の住居に住み続け、夫がローンや光熱費の支払を継続している場合、奥さん側は基礎収入の認定にあたって考慮されているはずの住居費の支払や、生活費として考慮されているはずの光熱費の支払を免れているわけですから、理論上、奥さんの基礎収入を高く認定したり、生活指数を少なく認定することが必要で、その結果、計算上、支払わなければいけない婚姻費用の額は、算定表よりも少なくなります。

 

このように、奥さん側の生活費の一部を負担し続けている場合、算定表よりも低い金額で婚姻費用が認定されると考えられます(冒頭のケース①)。

 

また、算定表は、奥さん側で子どもを養育していることを前提にしています。

したがって、子どもを旦那さんが養育している場合には、当然、算定表よりも婚姻費用の額は低くなります(冒頭のケース②)。

 

たとえば、14歳以下の子どもが2人いる場合、算定表では、記計算式の2)の部分で、妻側の生活指数/全体の生活指数=100+55+55/100+100+55+55(≒0.67)で計算されていますが、2人とも旦那さんが養育している場合には、100/100+100+55+55(≒0.32)となるはずで、妻側の生活費の割合が大きく減少しますから、当然、支払わなければならない婚姻費用の額は低くなります。

 

以上のように、①相手方の生活費の一部を負担し続けている場合、②こちら側でこどもを養育している場合の2つのケースでは、理論上、婚姻費用を算定表よりも減額できます。

 

ただ、言い換えると、算定表よりも低い金額が認定されるケースは、この2つくらいしか考えられません。

 

たとえば、自分が住み続けている住宅のローンの支払が大きすぎるために算定表どおりの婚姻費用を支払えないといった主張がよくされますが、「相当な住居費はすでに算定表で考慮されており、それを超える住居費の支払は「資産形成」であって、扶養義務に優先しない」といった冷たい理由で一蹴されてしまいます。

 

また、妻は実家に帰っており実家の援助を得て生活しているから生活費がかかっていないといった主張も、「第1次的な扶養義務者である夫が本来負担すべき生活費を、第1次的な扶養義務者でない妻の実家が立て替えているにすぎない」といった理由で一蹴されてしまいます。

 

このように認められる可能性がない主張をしても時間が浪費されるだけですし、裁判所からも冷たい目で見られ、精神衛生上もよくないので、やめておいた方が良いといえます。

 

以上で、婚姻費用に関する説明を終えたいと思います。

 

前回のpart1と総合してまとめると、婚姻費用の争いでは、①基本的に、算定表どおりに決まるので、争うのは得策でないこと、②争える場合は限られているので、争える場合かどうかきちんと見極めて争うことが必要であること、といったことがいえるかと思います。

 

次回以降は、財産分与について書いていくつもりです。