男性の離婚 その4 財産分与(part1)

こんばんは。ho-rituiroiroです。

これまで、離婚に関するいろいろを書いてきました。

今日からは、財産分与について書いていこうと思います。

 

先に今日書きたいことを簡単にいうと、財産分与の基本的な考え方から、財産分与は争いが生じやすく、争いが生じた場合には、話し合いでの解決が困難です、ということを書くつもりです。

 

さて、早速ですが、財産分与というと、簡単に、「共有財産を2分の1するだけでしょ。簡単じゃないか。」と思われがちです。

 

しかし、まず、「何を」2分の1をするかという点が問題になります(分与対象財産の確定の問題)。

 

次に、分与対象財産が明らかとなった後、それを「どのように」金額に見積もるかという点が問題となります(分与対象財産の評価の問題)。

 

つまり、「2分の1する」のは最後の作業で、その前提作業が大変なのです。

 

このブログの「心構え(part1)」では、夫婦の財産が預金くらいしかない夫婦は簡単だと書きました。

これは、対象財産の確定(預金)と評価(残高)が通帳を見れば一発で分かるからです。

 

これに対して、不動産や退職金が問題となる場合、争いが生じやすくなります。

 たとえば、退職金については、そもそも対象財産に含まれるかといった点や、現在価値をどう見積もるかといった点が問題になりえます。

また、不動産については、その評価が問題となります。

そして、これらの問題点について、双方が自分に有利なことを主張するので、争いが生じやすいのです。

 

このように、財産分与では、①何を対象にするのかという問題と、②対象となる財産をどのように評価するかという問題があって、③実はこれらの点で揉めるんだ、ということがいえます。

 

以上を踏まえた上で、財産分与の基本的な考え方ですが、簡単にいうと、「プラスの財産からマイナスの財産を差し引いて、残ったものを2分の1する」というものです。

 

この点は、会社に勤めている方では、会社のバランスシートをイメージするとわかりやすいかもしれません。

 

つまり、まず、左側(資産)にプラスの財産、自宅などの固定資産や、預金、保険、株などの流動資産を書きます。

次に、右側の上(負債)に住宅ローンなどのマイナスの財産を書きます。

そして、右側の下に余った部分(純資産)があれば、そこを2分の1する、というイメージです。

右側の下に余った部分がなく、むしろ右側が左側より下にはみ出てしまうという場合は、財産分与はゼロです。

 

以上のことから、財産分与において、男性側にとっては、渡す財産を少なくするため、いかに左側を小さくするかということが問題になり、反対に女性側にとっては、もらう財産を多くするため、いかに左側を大きくすることが問題になる、ということがいえます。

 

左側を小さくする方法としてまず考えられるのは、財産の評価を低く見積もることです。

たとえば、自宅がある場合には、自宅の評価を低く査定してもらうといったことが考えられます。

他方、女性側では、自宅を高く査定してもらうでしょう。

 

また、そもそもある財産を対象財産に含めない、ということが考えられます。

いわゆる特有財産の主張です。

他方、女性側では、なんとしてでも特有財産の主張を許したくありませんので、それは夫婦共有財産だと主張するでしょう。

 

このように、財産分与では、男性側と女性側双方が、それぞれ自分に有利になるよう、全く正反対の主張をするようになるため、極めて争いが生じやすいのです。

 

この点、「婚姻費用・養育費算定表」のように、当事者間で共有できる画一的な基準があれば便利です。

しかし、残念ながら、財産分与では、個別具体的な財産の内容や、財産が形成された経緯等によって様々な判断がありうるため、画一的な基準といったものがありません。

 

そのため、お互いが折り合いをつける地点が見つからず、紛争が長期化し、ともすると話し合いでの解決ができない状況に陥るケースが少なくないところです。

たとえば、自宅などの不動産なんかは、どう評価するかによって、渡す(もらえる)金額が数百万単位で変わったりするので、どうしても「間をとって丸く収める」的な考え方では収まりきらないところがあるわけです。

 

以上、簡単に述べたところからわかるように、「財産分与をちゃんとやろう!」と思うと、とても大変です。

 

というより、「財産分与をちゃんとやる」ことは、調停では不可能だと思った方が良いです。

 したがって、財産分与にこだわるなら、①調停をとっとと諦めて、訴訟をする、②ある程度妥協する、③離婚だけ成立させた上で、別途、財産分与調停を申し立てるといった手段をとることが得策です。

つまり、調停でいつまでもダラダラと話し合いを続けていても、上記①から③のうちどれかを決断しなければ、解決に向かわない(ことが多い)ということです。

 

ただ、現実的な問題として、③は婚姻費用をもらえなくなる女性が応じません。

また、①は時間も労力も、調停の倍かかります。

したがって、②で落ち着くことが無難だったりして、男性側にとっては「損したなー」という気分になるところです。

 

ま、「そういうものだ」と諦めるしかありません。

もし嫌なら、時間と労力を使って訴訟を戦うしかありません。

 

以上を十分に理解した上で、今日は終わりにしたいと思います。

 

次回以降は、対象財産だったり、特有財産だったりということについて詳しく書いていこうと思います。

 

part2に続く